日 録

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 明日(11日)から13日まで、後期入試にまつわる業務のため、つくばに泊まり込みになるので、きょうは閑話を書いてみたい。

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 母からスイスのおみやげでもらったぬいぐるみが、娘の大のお気にいりで、これをわが家では「モルモットちゃん」とよんでいる。
 娘は本を読んだりしているときもモルモットちゃんをわきにかかえているし、ねるときももちろん2階の寝室に連れてあがる。
 モルモットのうたを作ってうたってみたり、モルモットちゃんはじゃんけんするときにグーしかだせないからと、チョキとパーの形を折り紙でつくって、前足につけられるようにしてあげたり、絵本やノート、カードまで専用のものをつくってあげるなどしている。
 また、それらの品をつくっているのは「モルモット株式会社」だというので、こどもの想像力には感心する。
 モルモットちゃんのふるさとという理由から、娘がスイスに格段の関心をもつようになったのもおもしろい。

 ところで、このぬいぐるみが模している動物を「モルモット」とよぶのは便宜的で、ニホン語の文脈では、(「モルモット」からは区別される)英語由来の「マーモット」というほうがよいらしい。
 ニホン語でいう「モルモット」は、ネズミ目テンジクネズミ科の「テンジクネズミ」で、かつては実験動物として知られていたものだ。それにたいして、「マーモット」は、ネズミ目リス科の、しっぽが大きく、直立する動物で、われわれの世代なら「山ねずみロッキーチャック」というキャラクターで知っているだろう。

 もちろん、「マーモット」も「モルモット」も、語形としてもとをただせば同じなのだが、ニホン語では「モルモット」というかたかなだけが、なぜか脈絡を絶って、テンジクネズミをさすようになってしまった。これはかつて、「マーモット」の指示対象と「モルモット」の指示対象が、誤解によってむすびつけられたことに由来するらしい。
 現代のヨーロッパ諸語では、「マーモット」をさすのに、英語 marmot、フランス語 marmotte、イタリア語 marmotta、スペイン語 marmota など、「マーモット」、「モルモット」に対応する語形をつかっている。
 それにたいして、「モルモット」をさす語彙項目は、英語 cavy、フランス語 cobaye、イタリア語 cavia、スペイン語 cuy などと、「モルモット」とはまったく無関係の形をおびている。

 手もとにある Larousse étymologique をひいてみたところ、marmotte の語源は marmotter「つぶやく、くちごもる」に送られていて、「15世紀末、つぶやき murmure をあらわす擬音語由来の語根 mar-, marm- から」と書かれている。手もとにある Petit Robert もおなじ説をとっている。
 一方、(手もとにないので、ウィキペディアのページ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%83%E3%83%88 経由で孫引きすると)OED の marmot の項には、フランス語 marmotte、およびロマンシュ語 murmont を経て、「山ねずみ」をあらわすラテン語 mus montis(対格 murem montis)にさかのぼると書かれているそうだ。混淆的な語源なのかもしれない。