日 録

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 台風27号と28号がニホンに接近してきている。27号は伊豆諸島をかすめて東にぬけるらしい。10月も下旬になってから台風が接近するのは異例だ。
 台風が北からつめたい空気を吸い込んでいるせいで、きょうは東京では、しぐれのようなつめたい雨がふっている。

 ここのところ、夜は疲れて比較的早くから寝ることが多かったので、おつまみを買ってきていなかったが、台風がすぎるのをまつあいだに小腹が減ったときのため、とおもって、ひさしぶりにピーナッツを買ってきてしまった。ピーナッツはおいしく感じるが、カロリーが高い。
 買い物ついでに、まずいコーヒーをのんできた。近所には、まずいコーヒーを出す店しかなくなってしまった。

 ことしの年末で、いまの家に引っ越してきてからちょうど10年になるが、このまちに住みはじめたころは、いい店があった。
 散歩をしてはたちよっていたその店を、旧≪日録≫には≪A≫と書いていたが、いまでは閉店してひさしいので、名まえを書いてもさしつかえない。≪Les Amis≫という店だった。
 コーヒーがおいしいだけでなく、ひとのためになる有意義な活動を、≪社会貢献≫などとおおげさなことをいわずに、さらりとやってのけていた。
 しかし、善意だけではやっていけないのがいまの世の中なのだろう。さみしいことだ。

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 以下は、最近購入した書物についてしるす。
 留学時代、わたしも高等社会科学研究院の講筵に列していたイレーヌ・タンバ先生の『新版・意味論』の訳書。訳者の大島先生も当時顔見知りだった。

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 わたしがもっているフランス語版は1994年刊行の第3版で、大学院生のころ買って読んだものだが、今回の訳書の底本は2007年に大改訂された第5版ということなので、21世紀になってからの研究の進展も解説されている。わたしにとっては新しい内容が多くあり、勉強になった。
 しかし、個人的には訳書のニホン語の用語が少々気になる。「論証」という訳語がほぼ定着している argumentation が「議論法」となっていたり(これではまるで、論証理論以前の修辞論の、そのまた以前の、雄弁術にまでひきもどされるようだ)、フランス語にはあるが、英語にはない langue / langage の区別(英語ではどちらも language になってしまう)を明示するくだりではせっかく langage を「言語活動」と訳したのに、アントワーヌ・キュリオリを紹介する段になると「言語能力」と訳しているなど、一貫していない。

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 アンリエット・ヴァルテールの Aventures et mésaventures des langues de France
 おなじ著者の前著とどうしても似ているが、EU統合後のフランス語や諸地方語の新たな状況も書かれており、参考になる。学部の講読の授業にも使えそうだ。

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 この本を読んで、はじめて知ったことのひとつ。南部コルシカ語でおこなわれている cavaddu (fr. cheval)、famidda (fr. famille) などの -dd- のそり舌音を、cacuminale というらしい。
 ヴァルテールはこの名称を「きれいな名まえ joli nom」と評している(p.131)。そんなふうに感じるのか、と思うが、ざんねんながら、感覚そのものは共有できない。

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 フランス出張中に知り、この日録でも言及したダニエル・エヴレットの『ピダハン』と Language - The Cultural Tool

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 前著『ピダハン』の訳書がみすず書房からでていることはあとから知り、追加註文していたが、国内とりよせなのでこちらのほうがはやく来た。
 ピダハン語(弁別される音素の数が少ないので、「ピラハン語」といっても音韻論的には同じ)の話されている地域に入っていったときの経緯や発見の過程がくわしく書かれており、おもしろい。
 新著の英語版はあとから着いたので、まだ少ししか読んでいないが、こちらは言語一般に関する話が多く、ピダハン語の特異性への言及は前著より少ないようだ。