日 録

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 13年まえ、大学の専任の職についてからというものの、まいとし2月は、かならずといっていいほど精神が低調になっていたものだ。
 そのことを、かってに「2月病」と称していたものだが、昨年からあまりそれを感じなくなり、ことしは、いまのところ、まったくといっていいほど感じないですんでいる。
 公私ともに、うれしいこと、ありがたいことが重なり、むしろふだん以上に調子がよい。
 もちろん、年度末をひかえた時期でもあり、いろいろとめんどうな問題も多いことは多いのだが、それさえ例年のようにこころの負担にならない。
 としをとって、鈍感になってきたということもあるだろうが、実際に幸運にめぐまれていることはまちがいない。
 はねまわるような昂揚ではない。ひくいところからゆっくりと、まるで、潮がみちてくるような多幸感(euphorie)だ。先週木曜の夜を最後に酒を1滴ものんでいないから(といっても、酒をのんでいないのはわずか4日めだが)、酔郷ともちがう。

 まずは、ふたつまえの記事で書いたように、13か月かかった主語不一致ジェロンディフの調査が終了した達成感から今月がはじまったことがあげられる。
 ひとからみると、「なにがうれしいか」というようなことだが、ここはやはり、言語学にかかわる人間にありがちな、パラノイアックなよろこびだという自覚がある。
 つぎの作業として、ジェロンディフ句がかかってゆく先の支配節(proposition régissante)の統辞的、語彙的条件などをより詳細に再調査しなければならず、すでに2月4日から再調査をはじめているが、こんどは前の段階で主語不一致として分離してある1483例だけに目をとおせばよいので、35475例を読まなければならなかった本調査にくらべれば、ぜんぜんたいしたことはなかろう(本調査のときにひどく悲観的だったのとは対照的に、なぜか楽観している)。
 ちなみに、再調査はこの3連休でおおはばに進むことが期待されたが、9日土曜日になってから、3つの調査項目のうちのひとつで、方式を変更したほうがよいことに気づき、じつはいま、その項目だけ初めからやりなおしで時間をとっている。それでも、どういうわけか、楽観していられる。精神とは不思議なものだ。

 それから、いろいろなイヴェントや交流の機会も、2月、3月、そして来年度にかけて予定がはいってきており、いまからたのしみだ。
 とくに3月18日には、岡山大学に招かれて講演をしてくることがきまり、これが当面最大のイヴェントになりそうだ。
 岡山大学文学部では現在、第2期中期計画にもとづき、言語学関連、文学関連、人類学・社会学関連の「3大プロジェクト」( http://www.okayama-u.ac.jp/user/le/project/pro-long.html )が進行中とのことだ。
 そのうち、文学関連のプロジェクトでは、フランス文学の柏木隆雄先生、ロシア文学の沼野充義先生といった、まさに斯界の大御所というべき先生がたの講演を企画しているとうかがった( http://www.okayama-u.ac.jp/user/le/news/data2013/e130309.pdf )。
 これに対応する言語学関連の講演会での講演者のうちのひとりとして、わたしをお招きくださるということだが、文学関連の燦然たる講演者にくらべて、あまりにも「しょぼい」のではないかと、ひそかに心配している(笑)。
 わたしごときにお声がかかったのは、昨年9月、岡山大学の金子さんを筑波大学にお招きした( http://wjunya.blog39.fc2.com/blog-entry-217.html )ことに、金子さんが律儀に「お返し」をしてくださったという一面もあろう。
 しかし一説には、「学的交流も、一般社会でのひとづきあいとおなじく、互恵的であってこそ長つづきする」ということもあるので、ここはありがたく招待を受け、せいぜい退屈されない話をするよう、つとめてこようと思う。