日 録

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 先日註文しておいた『スペイン語史』がとどきました。
 スペイン語のみならず、ほかのロマンス語の歴史に興味がある場合にもたいへん参考になる一冊ですね。
 また、ピンポイントの関心にも答えてくれる、「かゆいところに手がとどく」本だと思います。
 たとえば、わたしが興味のある現在分詞について。
 『スペイン語史』でスペイン語の現在分詞についてみてみましたが、中世にはすでに(ヘルンディオではないほうの)現在分詞は名詞・形容詞としてあつかわれていたとのことで(pp.179-180)、そのころからすでに「スペイン語らしさ」がはっきりしていたといえますね。

 ちなみに、スペイン語は、ラテン語の participium præsentis と gerundivum (gerundium) の区別をほとんど捨てた言語で、前者は一部の形容詞として語彙化しているのみです。
 イタリア語はこんにちもそれらの区別をたもっている言語です。
 フランス語は、いったん両者の区別を捨てたにもかかわらず、「前置詞 en + 現在分詞」を固定化させることによって、区別をちがったかたちでいわば「復活」させた言語です。

 [後日追記] 一部、フランス語にも participium præsentis と gerundivum (gerundium) の区別が、動詞由来形容詞と現在分詞とのちがいとして生き残っているケースがあります。
 ベルギー王立フランス語アカデミー会員にして、ブリュッセル自由大学名誉教授の Marc Wilmet 先生( http://www.arllfb.be/composition/membres/wilmet.html )による Grammaire critique du français (Hachette, 1997) の p.293 に、現在分詞と動詞派生形容詞のあいだの対立の網羅的なリストがありますので、以下に書きうつしてみます。

 adhérant , adhérent
 affluant, affluent
 coïncidant, coïncident
 communiquant, communicant
 confluant, confluent
 convainquant, convaincant
 convergeant, convergent
 déférant, déférent
 déléguant, délégant
 détergeant, détergent
 différant, différent
 divergeant, divergent
 émergeant, émergent
 équivalant, équivalent
 excellant, excellent
 expédiant, expédient
 extravaguant, extravagant
 fatiguant, fatigant
 fringuant, fringant
 influant, influent
 interférant, interférent
 intriguant, intrigant
 naviguant, navigant
 négligeant, négligent
 précédant, précédent
 provoquant, provocant
 résident, résidant
 somnalant, somnalent
 suffoquant, suffocant
 vaquant, vacant
 violant, violent
 zigzaguant, zigzagant

 しかし、わたしが真っ先に思いうかべた pouvant, puissant がこのリストにはふくまれていませんね。これは網羅的とはいえません。しかし、どこまでを「動詞派生形容詞」とみなすかに独特の考えがあるのかもしれません。
 Wilmet 先生はいちど来日なさったときに、わたしが東京を案内してまわったことがありました。饒舌なフランス人とちがい、ビールをのんでしずかにうなづき、ほほえんでおられたお姿が印象的でした。


 * * * * *

 きょうは、授業3こまの合い間に、休学してグルノーブルで3年間日本語教師のお仕事をしておられ、最近帰国された大学院生(秋学期から復学予定)のかたとひさしぶりに再会しました。

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 おみやげにサヴォワの白ワイン、Roussette de Savoie をいただきましたので、院生のみなさんで飲んでもらうため、院生研究室においてきました(みなさん、飲んでくださいね)。
 フランス語学領域の院生研究室は今春引っ越し、今年度一杯は耐震工事がつづきますので、これで最終形態というわけではないのですが、いま仮に広めの部屋にドイツ語学領域と同居しています。

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 おもしろいことに、フランス語学は(ここに越してくる以前から)まんなかに大きなテーブルをおいて、それにむかってみんなですわるスタイル、それに対して、ドイツ語学は、(おなじく、越してくる以前から)壁にむかって机をならべ、それぞれにすわるスタイルです。
 これを要するに、フランスは「単一にして不可分の共和国」(une République individible)、ドイツは「連邦共和国」(Bundesrepublik) というぐあいに、集団意識のありようがちがっている影響もあるのではないか、と妄想しました。
 一昨日、近所の川で、ひと月まえの記事( http://palantien.blog137.fc2.com/blog-entry-309.html )で言及したカルガモの親子と再会しました。こどもたちがずいぶんしっかりしてきたように思います。

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 それから、これまたちょうどひと月まえの6月16日( http://palantien.blog137.fc2.com/blog-entry-311.html )、および6月22日( http://palantien.blog137.fc2.com/blog-entry-313.html )に言及したコルシカ語の辞書の話のつづきです。
 もう1冊の「大きいの」、u Maiori がとどきました。1101ページのずっしりとした辞書です。

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 22日に言及した別のコルシカ語の大辞典が、語末に強勢があるときしか強勢位置を示さないイタリア語式であるのとちがって、u Maiori は語強勢の位置を網羅的に示していることが学習者としてはありがたく、また用例も格段に充実しています。買ってよかったです。

 ところで、「小さいの」u Minò、「大きいの」u Maiò、「もうひとつの大きいの」u Maiori とも、筆頭著者は Antoine Louis Culioli は、発話理論で有名な言語学者の Antoine Culioli と同一人物であるというのは、16日の記事の追記にしるしましたが、かれの一連のしごとには、ユネスコで「危機に瀕する言語」のひとつに指定されているコルシカ語を絶やさないようにしようという、悲愴な覚悟が見てとれます。
 u Maiò の序文は Un précieux héritage [貴重な遺産] と題されていましたが、それよりあと(2012年)に刊行された u Maiori の序文は Un précieux héritage en grand péril [大きな危機にある貴重な遺産] と題されており、危機感の増大を感じます。
 高齢の Anoine Culioli は、u Maiori の序文を、"Ces dictionnaires sont vraisemblablement ma dernière contribution à la langue corse. Je lui souhaite une longue et belle vie. Encore faudra-t-il que les Corses eux-mêmes provoquent ce renouveau. La balle est dans leur camp et dans aucun autre" [これらの辞書はおそらくわたしのコルシカ語に対する最後の貢献になるでしょう。コルシカ語の生命が長く、美しからんことを祈ります。さらに、コルシカ人自身が、コルシカ語の復興をもたらさなくてはなりません。ボールはコルシカ人のがわにあり、ほかのどこにもありません] とむすんでいます。
 このことばには、コルシカ人ならずとも、こころ動かされます。
 わたしも正直、フランス語のような、黒山のひとだかりのようにおおぜいの研究者がいる言語を研究するよりも、コルシカ語のような、放っておくと絶滅しかねない言語を研究したほうが、意味のあるしごとになるのではないかと、菲才をかえりみず思っております。
 典型的な梅雨空で、7月にはいってからきょうまで、毎日雨がふっています。
 梅雨のせいか、身体がだるく、体調もいまひとつです。しかしさいわい、精神状態は良好です。

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 河崎靖ほか『スイスロマンシュ語入門』(大学書林)を買いました。去年出ていたのに、不覚にも最近まで知りませんでした。
 ことしは、ロマンス語学会に(いまさらながらに)入会したり、ロマンス諸語の時制・アスペクトの対照研究の科研費に名を連ねたり、いくつもの理由が重なってロマンス諸語への興味が増しているので、その一環ということで、長距離通勤の往還の時間を利用して、楽しみに読みたいと思います。
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