日 録

 くもりときどき晴れ。つくばの最高気温は13.3度。
 変則的3学期制の筑波大学では、きょうが試験期間の最終日で、明日から月末まで、つかのまの秋休みだ(12月から3学期)。
 しかし、なんども書いているが、来年度からとうとう開学以来40年間維持してきた3学期制を撤廃し、ふつうの大学らしい2学期制に移行するので、この時期の試験や休みはことしが最後だ。
 わたしは疲れやすいたちなので、すっかり疲れきるまえに小きざみに休みが来る3学期制も嫌いではなかったが、9月や2月など、ほかの大学が休みの時期に学期中というのもなかなか不便ではあるので、変更もやむをえないかと思う。

 きょうは2こま試験を実施した。11日にひらかれた北京大学、中国人民大学と共催のシンポジウムにパネリストとしていらしてくださり、知り合っていた愛媛大学の塚本秀樹先生がご恵投くださったご著書を、ちょうどきょう拝受していたので、試験監督の合い間にいくらか読んだ。
 塚本先生によると、日本語と韓国語を対照すると、日本語では語と文の境界領域が一部融合しているが、韓国語はそれらをはっきり区別するようになっているという。たしかに現代日本語は、用言の連体形と終止形が大多数の場合おなじになっていることだけを見ても、語と文の境界は不明瞭だ。フランス語の擬似関係節 (Madame, votre broche qui s'accroche! (Grégoire, 1949)) なども、文であるかどうかがはっきりしない例なので、その意味ではフランス語は日本語と似たところがあるように思う。
 2こまの試験のあとは、1こま、期末課題を回収するついでに、試験期間ではあるが例外的に平常授業をした。標準履修年次2年生の科目だが、いまの2年生はきわめて優秀なひとが多い。東日本大震災の直後、余震がつづき、原発事故の恐怖も大きいなか入学した層なので、学業に対する覚悟がちがうのかもしれない、とさえ思う。

 16時45分から、人文社会科学研究科文芸言語専攻の大学院説明会。
 50人近い空前の来場者数で、異変といってもよいほどの盛況だった。
 そのため、例年のように当初から大学院生が同室に入ることができず、説明の出番がまわってきたときに呼び込む形になった。
 領域所属の大学院生のうち、ふたりにきてもらって、いっしょにフランス語学領域の紹介をした。
 その後、フランス語学領域の個別説明をききにきてくれたひとはふたりいた(ふたりとも学外から)。
 そのうちのひとりは、昨年夏から今年夏まで1年間、ジュネーヴに交換留学で行ってきて、現在4年生。今度の2月期入試を受けてくれるという。卒論のテーマは単純未来形で、わたしとも関心が近い。
 もうひとりは3年生なので卒論はまだ先で、大学院を受験するとしても次年度だが、リヨンでの短期研修に参加したことがあるなど、熱心なようすだった。
 領域ごとの説明、質疑応答をふくむ全体会が19時ころまでつづき、個別相談に応じていると20時ころになった。
 全体的に、たいへんな熱気で、いったいどこにこれほど熱心な学生たちが、しかもこんなに大勢いたのだろうと思うほどだった。

 フランス語学領域では、7月期入試ですでにひとり、学内からの入学を決めた学生がいる。2月期もすくなくともひとりは受験してくれるので、うまくいけば、来春もまた複数の入学生を迎えることができるだろう。

 きょうは学外会議のしごとがおわったあと、17時に渋谷の井の頭線の改札をでたところの、岡本太郎の壁画のまえでお仲間とまちあわせる(まちあわせているとちゅうに、とおりかかったKさん(今夜のお仲間とはまったくべつの方面の)とぐうぜん会った)。
 そして、「精力絶倫」の看板が目立つ≪うな鐡≫に7月以来4か月ぶりにゆき、うなぎの串焼きや白焼き、かば焼き、うなぎの肝のつくだ煮などをたべながら、酒をのむ。

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 19時から、≪うな鐡≫からもほどちかい、その名も≪VIN≫という店に移動し、きょう解禁されたボージョレーの新酒と、ボージョレー・ヴィラージュの新酒をのむ。
 「うぇっ、ボージョレー・ヌーヴォーってこんなに酸っぱかったっけ?」とおもったら、同席したひとたちもやはり、ことしのは酸っぱいとおっしゃっていた。
 ボージョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォーはもともと好きだったが、やはりこちらのほうが渋みがあり、おいしく感じる。

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 この店は、ラタトゥイユがおいしい。
 また、木くらげのような真っ黒のきのこの名まえは、trompette de la mort。これをたべながら、店内でブラッサンスの≪Trompette de la Renomée≫を大合唱してしまった。同好の士はええのう(笑)。

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 新酒解禁の日にもかかわらず、店はすいていて、空席がけっこうあった。まいとし、解禁日翌日の金曜のほうが客が多いときいた。これはニホン的現象かもしれない。

 11月9日(金)、人文学類での来年度からの2期制移行の説明会に、説明要員として登壇するため筑波に出勤。わたし自身もかならずしもついていけていない新制度について、学生に説明するなどあまり考えられないが、さいわい、わたしが担当するのはフランス語学領域のみの局所的な説明でよかったので、やれやれ。

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 11月10日(土)、東京フランス語学研究会ならびに日本フランス語学会例会のため茗荷谷(跡見学園女子大学)へ。

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 跡見学園女子大学の校舎はつくづく瀟洒だと思うが、今回はじめて、のみものを買うついでに屋上にあがってみて、そのながめのよいことにもおどろいた。

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 学会終了後、つくばに移動し、前泊。

 11月10日(日)は、第10回北京大学・中国人民大学・筑波大学3大学合同フォーラム( http://www.jinsha.tsukuba.ac.jp/research_group/jc/2012/11/11 )のため、終了後の懇親会まで、筑波で夜おそくまでかかりきりになり、終電で帰宅した。午前の帰宅になったので、この記事の日づけも11日になっている。

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 フォーラムは「主観性」が共通テーマだったが、基調講演などで事例研究として示されたのが、日本語や中国語などでの呼称表現だったので、日本語の(かずおおい)自称詞は、話者が、言語主体としての話者と、世界を生きる主体としての話者に分裂し、前者が後者を選択、演出するようなポリフォニー的現象ではないか、というかねてよりの自説をラウンドテーブルで開陳させていただき、それなりの反響をいただいた。

 中国語にかんする彭広陸先生(北京大学)の基調講演では、対称詞の話題がおもしろかった。
 中国語で、女性に「小姐」とよびかけるのは、わるいコノテーションがしみついてしまったので、こんにちでは、なんと「美女」とよびかけるという(!)。

 たのしかったが、週末、まったく休めなかったのは体力的にしんどい。あしたからもまたしごとだ。

 きょうも快晴。乾いた風がここちよい。
 木曜は午後に切れ目なく3こまの授業を担当しているので、わずかに時間のある昼休みに、筑波大学の学内をあるきまわり、紅葉の写真をとった。

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 空気の澄んだ冬の晴れた日は、筑波山の双峰がまぢかにみえ、山の中腹の温泉街もみえる。
 ただ、人文社会学系棟からながめる筑波山は、総合研究棟(つぎ写真の右手前)があらたに建ってからは、山体の上の方しかみえなくなってしまった。ハコモノをたてるときは、設計上、こうした景観にも留意してほしいものだが。

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 きょうは二十四節季の「立冬」。きのうふっていた雨が朝にはあがり、午前中はくもり、午後からは快晴。

 筑波に出勤の途上、10月18日の日録( http://palantien.blog137.fc2.com/blog-entry-108.html )に登場したIくんからメールがきて、筑波の大学院(わたしの所属する専攻ではなく、「おとなり」の専攻)に合格したという知らせをうけとる。たいへんよろこばしい。さっそく返信で祝辞をのべ、さらに、大学についてから、かれの指導教員になるはずの先生がたにメールしておく(さすがに入試のまえに「よろしく」というのは節度を欠くので、合格発表までは、Iくんについて言及することを控えていた)。

 筑波は出勤するたびに紅葉のいろづきが濃くなってくる。いい季節だ。
 いつものように授業をして、研究会で発表をして、雑務もこなして、そこそこたいへんな1日だったが、万事ここちよく乗りきることができた。

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 またまた、非常勤出講先の学生が、みずから全世界に公開している Twitter で、教室でのわたくしめに言及してくださったので、記念にスクリーンショットをとっておこう(わざわざ「非常勤出講先」とことわったのは、本務校ではこのようなことは皆無なので)。

Aripan

 まあ、こんな発言でやる気が出るのなら、いくらでも言ってあげるけどね。ふふ。

 きのうとはうってかわって、どんよりとした曇天で、寒い。
 フランスなら、このころの天気はいつも曇りで、「万聖節の(ころの)天気 un temps de Toussaint」といえば、寒い曇天をいう。
 もちろん、フランスのほうがニホンよりずっと寒いのだが、きょうのような天気をすこしだけ、フランスの万聖節になぞらえたくなる。
 そして、きのうのようなほの暗く寒い天気も、きょうのようなすがすがしい晴天も、わたしは好きだ。要するに、秋冬派なのだと思う。

 きょうは朝から、10月末に完了したつもりだったあるしごとに問題があったことがわかり、修正に追われていた。じつに非生産的なしごとだ。

 夕方、気をとりなおして、この日の恒例としている近所のしにせの洋菓子店にゆき、生クリームのデコレーションをつくってもらう。
 そして、これまた恒例により、はずかしげもなくつぎのような文字を入れてもらう。

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 夕食のあと、わたしもふくめて4人でいっしょにケーキをたべて、こどもたちに結婚17周年を祝ってもらった。

 わたしのような変わりものの相手をながねんつとめてくれている妻には、感謝あるのみだ。
 結婚のことを考えると、いつも田中小実昌の「ぼくはケッコンしているのか」という一文をおもいおこす。ごく一部を引用する。
 「恥ずかしいはなしなんだが、ぼくには女房がいて、娘も二人いる。だけど、だったら、ぼくはケッコンしているのだろうか?
 理屈にあわない、むちゃなことを言うな、とおっしゃるかもしれない。
 だけど、あなた自身、夫がいて、あるいは妻がいて、子供もあり、だが、結婚している、という気もちがあるだろうか。」(文化出版局『また一日』、pp.147-148)
 社会性のあまりないニンゲンであってみれば、世間なみに結婚していることのほうがふしぎなくらいだ(というのも、家庭は、小なりといえどもすでに社会のようなものなので)が、実際には子どもたちが年々そだってきていて、そのことにもおどろいている始末だ。

 乾燥した晴天で、すがすがしい日だった。わたしは晩秋から初冬の、乾燥した晴天がいちばんすきだ。
 半年に1度の恒例により、つくばのフランス料理店≪Chez Lénon≫で昼食にクスクスをたべた。いつもながら、ここのクスクスはとてもおいしい。本場であるチュニスの高級店≪Dar Es Saraya≫をおもいだすほどのおいしさだ。

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 食後に洞峰公園を散歩した。池には、おびただしいカモやガンがおよいでいた。渡り鳥も越冬のため渡来しているのだろう。

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 午後、大学にゆき、修士論文にとりくんでいる大学院生と面談した。12月提出なので、ここまできたら、ひたすらはげますのみ。
 大学院生をみていると、ほとんど「火事場のばかぢから」だけでなんとか論文を書いていた、自分の若かりしころをなつかしく思い出す。

 つくばではもう、木々の葉がかなりいろづいてきている。

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