日 録

 今週末はフランス語フランス文学会秋季大会のため、神戸大学に出張しきた。
 神戸大学にはきのう初めて行ったが、阪急神戸線で六甲に出て、そこから歩くつもりで(学会の案内パンフレットには、阪急六甲駅から、タクシーでも5~10分、徒歩でも10分と書いてあった。タクシーでも徒歩でも同じ時間かかるかもしれないというのは、どういうことだろう?)。

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 しかし、駅を出て案内地図を見ると、わかりづらい! どの道を行ってよいものやら。

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 あまりわからぬまま、方角のみ記憶して、てきとうにあるきはじめる。ずっとのぼり坂なので、道をまちがえると体力をむだにするという危惧もある。

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 しかしさいわい、あまり大きなまわり道はせずに、農学部の一角に入ることができた。山の上にあり、さわやかな場所だ。

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 学会実行委員会が用意した地図も、たいへんわかりづらい。理学部と文学部しか地図になく、大学全体のなかでどんな位置にあたるのかさっぱりわからない。神戸大学にべつの学会で来たことがあるというひとのはなしによると、そのときの案内書類にも同様の欠陥があったというから、察するに、これは、自分の学部だけわかればよいという、神戸大学固有の病理なのだろう(笑)。

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 学会そのものは、言語学関係の発表が充実していて、たいへんおもしろかった。
 おわったあと、わたしよりよく道を知っているひとに先導してもらって、六甲のまちなかに歩いて降りる。夜景がきれいだ。

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 語学分科会第2部の発表者だったかたがたとともに、JR六甲道駅にほどちかい鶏料理店、≪一期一会≫にゆき、ビール、焼酎、ニホン酒をのみながら話した。

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 料理はおいしく、わたしとしては好き勝手な話もして、たのしい夜になった。


 ほとんどいちにちぢゅう、しぐれのようなつめたい雨がふる。
 しかし、しめきった室内は、湿気がこもるせいか、けっこう蒸し暑く、温度調節がむずかしい。
 自分の研究室では、少し窓をあけておく。

 きょうは筑波に平常どおり出勤し、3こまの授業と、学外会議で休講した分の補講をする。
 木曜のわくでの補講は今学期(筑波の3期制のなかの2学期)はきょうが最後なので、おわったあと少し雑談をした。
 学生のひとりに、職業経験がけっこうあり、年齢がわたしとたいへん近い(1歳としした)Kさんという女性がいる。
 わたしは人文学類の広報委員長をしていて、他学類の案内誌などもある程度目を通しているので、Kさんが所属なさっている学類の案内誌に登場していることを知っていた。そこに寄せておられる文が、要するに「職業上、もっとひとの役に立ちたいので、大学に(再び)学びにきた」というような趣旨で、稀有のすばらしさだったので、こころから讃辞をのべた(わたしなどは、ひとの役に立とうなどという気もちは、皆無ではないにしても、きわめて稀薄だ。そればかりか、うたがい深くもあるので、この種の言説には警戒心さえいだくものだが、Kさんに関しては、ほんとうに平素からいやおうなく利他性がにじみ出ているようなひとなので、そこまで徹底していると、すばらしいと思う)。
 たまたま年齢を知ったときまで、同年代とはまったく思っていなかったので、ついでに、蛮勇をふるって、若さの秘訣をたずねてみた。Kさんは、じつにまじめなひとで、しばらく(困惑ぎみに?)考えられたあと、「よく寝ることでしょうか」とお答えになった。それならわたしも実践しているつもりだが、うーん。

 補講がおわったあと、18時から、研究室に来客をむかえる。
 来客といっても、きょうおこなわれていた大学院入試(わたしの所属専攻は10月には入試をしていないので、ほかの専攻だが)で筆記試験を受けおわり、明日口述試験を受けるというIくんという知り合いの学生だ。

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 Iくんとわたしとの共通の知り合いである大学院生のHさんも合流して、いっしょに大学近隣の中華料理店≪百香亭≫にゆき、いつものように、巨大な黒酢酢豚をたべながら、ビールや紹興酒をのむ。
 Iくんはたいへんおちついていて、まったくの平常運転というかんじだったので、明日もきっと大丈夫だろう。若いのに動揺しないひとというのは、それだけでもすごいと思う。
 晴れて、昼間は暑い。きょうの東京の最低気温は16.9度、最高気温は25.7度。

 最近、つかれているせいか、初歩的なミスが多い。気をつけなければならない。
 先週は、私信のつもりで同僚に返信したところ、それがメーリングリストあてになってしまい、あまりあちらこちらで明かしてはいけない情報が実質的に共有されてしまった。
 共有されたところで、まだ閉じたグループだからよかったものの、あまりにもありがちなミスにふさぎこんでしまいそうになった(もとのメールは、ヘッダーをみると、メーリングリストあてとかさねてわたしにカーボンコピーとしても送られていたため、見かけ上メーリングリスト経由で受けとった気がしなかったのだが、よくかんがえると、わたしも問題のメーリングリストにはいっているのだった)。

 まる1週間まえに枚挙して嘆いた案件のうち、最初のふたつ(論文)は、先週末でなんとか形になった。
 いちばん苦痛でなくとりくめる案件からかたづけたともいえるが、論文は、すきな課題であると同時に、事務しごととちがって、時間をかければすすむというものではなく、思うにまかせないので、正直にいって、さきに見当をつけておきたかった、ということもある。
 つづけざまに2本も論文をあげたのでは、どこかから「粗製濫造」という声がきこえてきそうだが、反論するならば、(1)そもそも濫造といえるほど多産ではない、(2)今回しあげた2本はたがいにまったく無関係のテーマなので、かぞえかたに手かげんはない、ということで、まあ、かんべんしてもらおう(だれに?)。
 それから、2期制移行の案件についても、明後日言語学主専攻の内部で打ち合わせがあることに追われて、かつ、論文完成の余勢をかって、(わたしとしてはめずらしく)精力的に作業をして、いちおう当面の責めはふさいだつもりだ。 
 のこる科研費の申請も、先週、学内でのチェック用の原稿を事務方に送っておいたので、いましばらくは待ちの態勢だ。

 ああ、あとは学類ホームページのリニューアル問題か(鬱)。

 まいにち、たいへんではあるが、わたしは過労でたおれることだけはないと自負している。
 なにしろ、生来「なまけ者リミッター」を装着しているので、精神的にはともかく、身体的には本当の過労にはならないだろうと思う。

[後日追記] この日からつくばエクスプレスのダイヤが改正された。
 新設の種別である「通勤快速」は朝ののぼり、夜のくだりで運用されるので、逆方向を利用するわたしにはかかわりないが、その他の便の時間もかわったので、どの便にのれば便利かなど、しばらく研究するつもりだ。



 http://www.mir.co.jp/company/release/2012/1015.htmlからの引用:

10月15日(月)にダイヤ改正を実施いたします。
〜輸送力を増やし、利便性の向上を図ります〜

 つくばエクスプレス(TX)を運営する首都圏新都市鉄道株式会社(代表取締役社長:石井幸男 本社:東京都台東区)は、平成24年10月15日(月)にダイヤの改正を実施いたします。
 今回のダイヤ改正は、車両3編成の増備および秋葉原駅改良工事、南流山駅ホーム延伸工事が完了し、輸送力増強対策が整ったことにより実施することといたしました。列車の増発や運行区間の延長などにより、輸送力増強および運行頻度の増加等を行い混雑緩和や利便性の向上を図ります。また、平日の朝・夜間ラッシュ時間帯に「通勤快速」を新設し、速達性を確保しつつ、混雑の平準化やお客様へのサービスの改善を図ります。
 【ダイヤ改正の主なポイント】
 1. 平日(上り)の朝のラッシュ時間帯の最混雑1時間当たりの運行本数を、現在の20本から22本にします。
 2. 平日(上り)の朝のラッシュ時間帯に「守谷〜秋葉原間」では普通列車を3本増発、「つくば〜守谷間」では列車の運行区間延長や種別変更をし、区間快速列車を2本増発します。
 3. 平日のラッシュ時間帯【朝(上り)および夕・夜間(下り)】に「通勤快速」を新設します。
 「通勤快速」停車駅
 秋葉原〜北千住間の各駅、六町、八潮、南流山、流山おおたかの森、柏の葉キャンパス、守谷、研究学園、つくばの計13駅
 ※通勤快速の運転時間帯は、快速の運転は行いません。
 4. 平日・土曜休日ともに秋葉原発つくば行き最終列車を、現在の23時30分発から15分繰り下げて23時45分発とします。
 5. 平日の夕・夜間時間帯に列車を増発および運行区間の延長(区間増発)を行います。「秋葉原〜守谷間」1本増発、「守谷〜つくば間」3本区間増発
 6. 土曜休日の夕・夜間時間帯の運行間隔の改善
 Machine à écrire というフランス語がある。文字どおりには「書く(ための)機械」ということだが、往年の「タイプライター」を意味する。当然ながら、いまではパソコンの普及で死語になった。
 しかし、わたしは machine à écrire ということばをべつの意味で愛用している。まったくの個人言語 idiolecte だが、機械のようにあれもこれも書かなければいけないとき、まるで自分自身が書く機械になったようなので、「machine à écrire 状態だ」というのだ。
 イメージ的には、映画「モダーン・タイムズ」のなかで、チャップリンが工場労働者を演じていたシーンのように、ただただ、追いたてられ、せきたてられて、手をうごかしている感じだ。この状態におちいると、いましていることの意義とか、この先の展望がまるでわからなくなり、焦燥感だけが、その根拠をたしかめるまもなくふくらんでゆく。

 じつは、いまがその状態なのだ。かかえこんでいる課題のうち、ここに書いてさしつかえのないものだけでも枚挙すると、つぎのようだ。

(1~2)10月末しめきりの論文が2本ある。2本あるので(1~2)とした(笑)。
 そのうち1本は、9月はじめから書きあぐねていたのだが、先週木曜に中央大学で話してきてから、奇蹟的に筆がすすみ、金曜と土曜でポワン・フィナルまで書き終えた。
 もう1本のほうはといえば、まだ4分の1程度だが、いちど口頭発表したことのあるはなしなので、なんとかなるのではないか。
 しかしこれはむしろ、いちばん好きでやっているしごとなので、これにだけは文字どおり寝食を忘れて没入できる。こういうことで machine à écrire 状態になるのはまだ、むしろ救われるような気もちになる。

(3)わたしが代表者になって、いまもらっている科学研究費補助金の最終年度なので、論文集を編もうとしている。
 その編集作業だが、きょう、最後の1本の論文をひととおり編集し、校正刷りを打ち出したので、これについては、いましばらくは執筆者がわにボールをなげかえした状態。
 しかしこれも研究のことなので、まだ楽しいところがある。

(4)ことしで科研費が最終年度ということは、じっとしていては来年度以降はもらえないということだ。
 今月(学内しめきり)、研究計画調書を書き、出したいが、まだほとんど手つかず。10月第4週(22日からの週)は学外会議でまるまる留守にするので、そのまえには浄書提出までいかないといけない。時間的には、たいへんきびしい。
 もちろん、申請を出せばかならず採択されるわけではないが、だから出さなくていいということにはならない。むしろ、出しつづけてもいつ採択されるかわからないからこそ、出せるときはいつも出さないといけない。
 筑波の同僚には、「つづけざまではしんどいから」といって、まえの研究課題をおえてからあえて中1年の空白をあけて申請し、空白後の申請も1度で採択されているひとがいて、尊敬してしまう。おもわず、「ひょっとして、あえて1年あけたほうが採択されやすいのですか?」などという、ばかな質問をしてしまった(笑)。

(5)人文学類教育課程委員のしごと。筑波大学は開学以来40年間まもってきた3学期制をとうとうとりやめ、来年度から2学期制に移行するので、来年度以降の新課程表、ならびに来年度の開設科目一覧を作成しなければならない。この実務は混乱がつづいている。
 フランス語学の新課程表などの作成そのものはもうおわったつもり(明日の教育課程委員会で承認されるはず)だが、これから学内オンラインシステムでの打ち込みがあり、これが難渋しそうだと予想される。
 現在別のシステムで動いている授業科目一覧・シラバス・履修登録をオンラインで全部統合し、卒業判定も自動化する計画が進められており、今年度一部先行実施されている。その統合システム「KDB(教育データベース)」の開発が未熟のまま走りだしたせいで、技術的問題が続出しているのだ。

(6)人文学類広報委員長のしごと。人文学類ホームページ( http://www.jinbun.tsukuba.ac.jp/ )は、いまの形になったのが2007年で、人文文化学群所属の3学類ではいまでは最古になってしまった。いまみると、どうしても古くさい感じは否定できない(わたしはこの武骨さがきらいではないが、宣伝戦略的にはよろしくない、ということになるらしい)。
 それで、来春からリニューアルをすることを検討しなければならない。今月の学類会議でリニューアルの検討を承認してもらうはこびなので、明後日、広報委員会内の担当者どうしで、おおまかな方針をきめようとしている。

 などなど。いつのまに、こんなにたいへんになったのだろう、という感じだ。4~5年まえも、「いそがしい」といっていたのだが、いまのたいへんさからくらべれば、あのころは牧歌的でさえあったのだ、と思わずにいられない。
 そんなわけで、去年の12月からとりくんでいる、主語不一致ジェロンディフの尨大な文例検索の作業も、この10月中はお休みにせざるを得ない。

 と、ここまで書いてきて、いちばんいわれそうなことは、「こんな愚痴を書きつらねている時間があるなら、どれかひとつでも、しごとをすればいいだろう」ということだ。
 効率をあげるためには、一見そうしたほうがよさそうなのだが、どうも人間はそういうふうにはできていないらしい。こうしてぶつぶつと文句をいって、ある程度すっきりしておかないと、かえって効率もさがるというものだ。
 「モダーン・タイムズ」のチャップリンも、機械のようには、はたらけなかっただろう。

 しかも、こまったことに、きのうの日曜の急激な寒さで風邪をひいてしまったらしく、体調もわるい。

 台風が房総半島の南東沖をかすめて行った影響で、晴れて、暑くなる。
 きょうは筑波大学は曜日ふりかえのため、筑波でわたしの担当する科目は休講になる。これを利用して、まいとし秋の恒例としている、中央大学でのゲストスピーカーをつとめた。
 多摩センターからモノレールにのると、さながら空中散歩のようで、たいへん爽快だ。
 運転手の真後ろに、鉄っちゃんむけ、あるいはこどもむけに、前向きの席があり、鉄っちゃんで、かつ精神的にこどものわたしは、まよわずそこにすわって景色をながめる。

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 中央大学はひろびろとしていて、筑波大学と雰囲気が似ていると思う。

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 わたしをむかえ入れ、紹介してくれるはずのホルヘさん(コードネーム)が、きょうにかぎって、朝、山手線で起きた人身事故の影響で遅れるというので、したかなく、みなさんに事情を説明して、かってに講義をはじめた。
 不在をおぎなったという意味では、たまたま、きょうわたしが来る日でよかったともいえる。
 ホルヘさんは、はじめてから30分くらいで来た。
 90分間の講義をなんとかつとめ、いくつかの質問にもこたえた。

 「ラテン語の単純未来形、ロマンス諸語の単純未来形、現在のロマンス諸語にみられる迂言的未来形が、いずれも歴史的には分析的(迂言的)形式から出発して綜合的形式へと移行する。そして、やがてはすたれて、それぞれあらたな形式にとって代わられる」
 という Fleischman の周期説を批判して、
 「迂言的未来形のように助動詞前置型の場合は、(メキシコなどの一部のスペイン語方言で綜合化しつつあるとはいえ)、ほんとうに綜合化してしまうと助動詞の人称変化が接合部分に吸収されてしまうので、綜合化しづらく、ロマンス語の単純未来形とは同列には論じられない」
 という趣旨のことを言った部分に対して、
 「たとえばロシア語の再帰動詞は、再帰代名詞が接尾していても、動詞本体の語尾屈折が保たれているではないか」
 という、するどい質問をいただいた。
 「たしかに、再帰代名詞などが接辞化するときは、動詞本体の活用がそこなわれない事例がけっこうあるようだが、迂言的未来形が綜合化している事例には、活用が失われ、その代償に主語代名詞を必須化しているものがある。代名詞と助動詞でちがうのかもしれない」
 というような返答をした。
 
 おわったあと、ホルヘさんとわたしと、学生3人(そのうち2人はまえから知り合い)でいっしょに昼食をとり、ホルヘさんがべつの担当科目をつとめるあいだ、学内で、学生2人とコーヒーをのむ。
 すべておわったあと、おなじメンバーで高幡不動にゆき、ワインをのむ。4人でワイン2本と、プラスアルファ、べつの酒ものんだが、だらだらと時間をかけてのんだせいか、ほとんど酔わなかった。

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 帰宅後、ネットでニュースを読むと、けさ山手線で起きた人身事故は、中学1年生の女子生徒が五反田駅で電車に飛びこんで起きたもので、自殺だったとみられているという。
 そんな年齢で自殺とは、あまりにも悲愴なことで、とても「電車がとまることが迷惑だ」などという気はなくなる。
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